先月11月17日(日)に、東京ビッグサイトで開催された「第5回がん撲滅サミット」に参加してきました。
がん撲滅サミットは、医療界、政財官、市民とあらゆる立場の人が力を合わせたオールジャパン体制でがんの撲滅を目指そうという活動で、年1回市民向けのイベントが開催されています。
がん治療の最前線で活躍される多くの先生らが登壇される中、がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔先生が「がん消滅最前線!~AI ホスピタルからネオアンチゲンまで」と題し、講演されました。
中村先生はがんゲノム分野の世界的権威で、がん免疫にも精通し、「延命」ではなくがんを「治す」ために、新しい免疫療法の開発を進めています。
先生の講演の要点をまとめると、以下のような内容です。
◎「がん治療革命」というべき、大きな変革が起こっている。
◎患者さんの遺伝子情報を元にして一人ひとりに適した治療を行う「がんゲノム医療」を中心に、「リキッドバイオプシー」「免疫療法」「AI(人工知能)」の3つのキーワードに沿った診断法・治療法の開発が進んでいる。
◎血液などから簡単にがんを診断できる「リキッドバイオプシー」が、がん発症・再発の超早期発見や、患者さんごとに最適な薬剤選択を可能にする。
◎免疫チェックポイント阻害薬は、遺伝子異常の多いがんに効果が高いことが分かっている。これはがん細胞を攻撃する免疫細胞ががんに集まりやすいため。
◎新しい免疫療法「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」の臨床試験が、世界中で行われているが、日本では遅れている。
◎「治癒」を目指す医療で、標準治療が受けられなって困っているがん難民を無くしていく。
中村先生は、リキッドバイオプシーという診断方法によりがんを早期に見つけ、さらにがん細胞の遺伝子情報から最適な分子標的薬を見つけて投与し、標準治療がない患者さんにはネオアンチゲン免疫療法などの新たな免疫療法を行う、という流れを提唱されています。
がんの標準治療は現在のがん治療で欠かせない第一選択肢ですが、ご高齢だったり、他の疾患があって標準的治療薬が使えない患者さんもいますし、標準療法が尽き果ててできる治療が無くなる患者さんも実際にいます。
中村先生の提唱される治療の流れで、「がん難民」となる患者さんがひとりでもいなくなることを願います。