新型コロナウイルスの検査にも、私たちの免疫が深く関わっているものがあります。
コロナの検査というと、皆さんがよく聞くのは「PCR検査」ではないでしょうか?ニュースやインターネットでも「PCR検査」という言葉が溢れていますよね。
実際に行われている主な検査には、次の3つがあります。
・PCR検査
・抗原検査
・抗体検査
ウイルスの遺伝子を増幅して見つけるPCR検査
まず、PCR検査から説明すると、PCRとは「polymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略です。ポリメラーゼとはDNAやRNAといった、ウイルスの遺伝子の一部のことをいいます。特殊な液体でウイルスの遺伝子を増幅させて、新型コロナウイルスがいるかどうかが判定する検査です。
コロナウイルスが出現してからPCR検査を知った方も少なくないと思いますが、犯罪捜査でもPCR検査は使われており、コロナウイルスがきっかけで始まったものではありません。
ウイルスの遺伝子を増幅するので多少時間がかかりますが、ウイルスが大きく増える前でも検出可能で、50~100個のウイルスが存在すれば「陽性」と判断できます。
発症から数日後のウイルスを見つける抗原検査
次に、抗原検査です。
PCR検査はDNAやRNAを利用して調べる検査ですが、抗原検査はウイルスを構成するタンパク質や、ウイルスが細胞に感染したときに生産される物質を調べる方法です。
・PCR検査……DNAやRNAからウイルスを調べる
・抗原検査……タンパク質やウイルスが感染したときに生産される物質を調べる
PCR検査は特殊な機器が必要になりますが、抗原検査では特殊な機器は必要とせず、簡便に検査できるキットが作られています。短時間で結果判定が可能ですが、PCR検査と比べると感度は鈍いです。
陽性と判断されるには1000個以上のウイルスが必要だとされています。そのため、ウイルス量が多い、発症から2日目~9日目の検査に使われることが多いです。
免疫反応から過去の感染を調べる抗体検査
そして、3つ目の抗体検査。
PCR検査と抗原検査は、ウイルスの存在そのものを調べる方法ですが、抗体検査は、ウイルスに対して生じた免疫反応「抗体」の有無を調べる方法です。
抗体とは、免疫を担う細胞のひとつであるB細胞が作り出す物質で、ウイルスが体内に侵入すると、そのウイルスが他の細胞に感染できないようにしたり、ウイルスを弱体化させたりします。抗体は血液に乗って全身をめぐっているので、血液を摂取することで、この抗体の有無を調べます。
・PCR検査/抗原検査……ウイルスそのものが存在するか調べる検査
・抗体検査……ウイルスに対する抗体が存在しているか調べる検査
抗体ができるのは、ウイルスが体内で認識されて、しばらく時間を要します。そのため、感染していても発病前や感染初期のような時期の検査には向きません。
では、なぜ抗体検査が必要になるかというと、過去に新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるためです。
抗体は、ウイルスがいなくなって生産が終わっても、短期間では血中から消えません。また、ウイルスがいなくなったあとでも、一定期間、ある程度の生産は続きます。抗体の生産が続いていて、専用部隊が待機している場合は、ウイルスが侵入しても、発病する前にすぐに直ることがほとんどです。
つまり、新型コロナウイルスに対する「免疫」があると判定されます。
PCR検査や抗原検査は、いま感染しているかどうかを調べるための検査ですが、抗体検査は過去の感染状況を調べたり、免疫があるかどうかを調べるためのものなので、疫学調査や健康診断などにも有用です。
抗体検査の中でも、中和抗体検査という、新型コロナウイルスのワクチン(mRNAワクチン)接種によって、ウイルスの感染や重症化を防ぐ中和抗体が獲得できたかどうかを測定可能な検査も出てきていますので、ワクチン接種後の免疫獲得の判断にも役立つでしょう。
【参考図書】
後藤重則医師, 家族を守る免疫入門, KAWADE夢文庫,2020.