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【ニュースPick up】「リキッドバイオプシー」血液検査でがんを99%の確率で検出

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2019.12.21

 

11月下旬、東芝が、血液を用いて、乳がんや膵臓がんなど、13種類のがんを識別することに成功したと発表しました。

血液中に存在する「マイクロRNA」という成分を分析することで、がんにかかっているかどうかを、たった2時間で99%の精度で判別できたそうです。

まだ研究段階の成果ですが、ニュースによると2020年には実証実験を開始して、21〜22年の実用化を目指すそうです。

日本経済新聞「血液1滴でがん検査 東芝、21年にもキット実用化」

こうした、血液や尿などの液体からがんを診断する方法を「リキッドバイオプシー」といい、実用化に向けて様々なところで研究が進められています。

血液でがんを調べる方法としては、これまでも「腫瘍マーカー」というものがあり、それとの違いがわからないという人もいると思います。

がんが体内にできると、特殊なタンパク質やホルモンなどが血液や排泄物中に増加し、これを腫瘍マーカーと呼んでいます。腫瘍マーカーは多くの種類がありますが、ストレスや他の疾患など、がん以外の理由でも数値があがることがあり、逆に本当はがんが存在するにも関わらず検査では正常値となるといったケースも多く、これだけで正確にがんを診断するのは難しいといえます(ですので、一般的に他の画像検査などと組み合わせて判断に使われます)。

一方で、「リキッドバイオプシー」として実用化が目指されているものは、血液等の検査だけで高い精度でがんを発見できることを目指しています。

組織を取る必要がないので患者さんの負担も少なく、まだ画像に映らないような段階の超早期がんの発見も期待されています。
また、がん細胞の遺伝子的な特徴も調べられるため、健康な人の検診に役立つだけでなく、患者さんの手術後の再発のモニタリングや、それぞれのがん細胞の特徴に応じて分子標的薬を選ぶといったことも、従来にないくらい簡単にできるようになると期待されているのです。

こうした技術によって、画像で場所を特定できないような超早期のがんが見つかったとき、その治療には全身的な治療法(薬物療法など)が必要になりますが、日常生活に影響を与えるような副作用が強い抗がん剤は適さないと思います。

せっかく、がん細胞が小さいうちに見つけられる技術が実用化されるなら、副作用なく超微小ながん細胞を退治できるような治療が望ましいです。
そのひとつとして「免疫療法」に大いに期待したいところです。

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第5回がん撲滅サミット講演「がん消滅最前線!~AI ホスピタルからネオアンチゲンまで」より

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2019.12.11

先月11月17日(日)に、東京ビッグサイトで開催された「第5回がん撲滅サミット」に参加してきました。
がん撲滅サミットは、医療界、政財官、市民とあらゆる立場の人が力を合わせたオールジャパン体制でがんの撲滅を目指そうという活動で、年1回市民向けのイベントが開催されています。

 

がん治療の最前線で活躍される多くの先生らが登壇される中、がん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔先生「がん消滅最前線!~AI ホスピタルからネオアンチゲンまで」と題し、講演されました。
中村先生はがんゲノム分野の世界的権威で、がん免疫にも精通し、「延命」ではなくがんを「治す」ために、新しい免疫療法の開発を進めています。

先生の講演の要点をまとめると、以下のような内容です。

◎「がん治療革命」というべき、大きな変革が起こっている。

◎患者さんの遺伝子情報を元にして一人ひとりに適した治療を行う「がんゲノム医療」を中心に、「リキッドバイオプシー」「免疫療法」「AI(人工知能)」の3つのキーワードに沿った診断法・治療法の開発が進んでいる。

◎血液などから簡単にがんを診断できる「リキッドバイオプシー」が、がん発症・再発の超早期発見や、患者さんごとに最適な薬剤選択を可能にする。

◎免疫チェックポイント阻害薬は、遺伝子異常の多いがんに効果が高いことが分かっている。これはがん細胞を攻撃する免疫細胞ががんに集まりやすいため。

◎新しい免疫療法「ネオアンチゲン樹状細胞ワクチン療法」の臨床試験が、世界中で行われているが、日本では遅れている。

◎「治癒」を目指す医療で、標準治療が受けられなって困っているがん難民を無くしていく。

中村先生は、リキッドバイオプシーという診断方法によりがんを早期に見つけ、さらにがん細胞の遺伝子情報から最適な分子標的薬を見つけて投与し、標準治療がない患者さんにはネオアンチゲン免疫療法などの新たな免疫療法を行う、という流れを提唱されています。

がんの標準治療は現在のがん治療で欠かせない第一選択肢ですが、ご高齢だったり、他の疾患があって標準的治療薬が使えない患者さんもいますし、標準療法が尽き果ててできる治療が無くなる患者さんも実際にいます。
中村先生の提唱される治療の流れで、「がん難民」となる患者さんがひとりでもいなくなることを願います。

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