新型コロナウィルス感染症の影響で、これまで会場で開催されていたがん関連のセミナーもオンラインで開催するところが増えていますね。
先日、あるがん治療のオンラインセミナーを拝聴させていただきました。お話されたのは、国立がん研究センター東病院副院長で先端医療科長の土井俊彦先生です。
国立がん研究センター東病院は、新しいがんの薬や治療法を開発するための臨床試験を数多く手掛けており、講演では、ゲノム医療、免疫療法(抗体医薬)、ウィルス療法、再生・細胞医療などの先端的ながん治療の現在について話がありました。
講演後には聴講者からの質問に答えるQ&Aセッションが設けられ、中でも質問が多かったのが「光免疫療法」についてです。患者さんからの注目度の高さが伺えます。
ご存じの方もいると思いますが、「光免疫療法」は、米国立がん研究所( NCI)の主任研究員・小林久隆医師の研究成果を元に、楽天メディカル社が開発しているがん治療法。現在、頭頸部がんに対する第Ⅲ相治験が国立がん研究センター東病院など国内の複数の施設で行われています。
まだ実用化には至っていません。
開発している楽天メディカル社も、ホームページ上で注意書きしていますね。
当社が開発している光免疫療法は、現在まだ開発段階であり、治験等による場合を除き、医療機関等で一般に治療を受けられる段階にございません。また、将来治療が受けられる医療機関も決まっておりません。ネット上には一部、あたかも当社が開発している光免疫療法による治療が受けられるかのような情報を提供しているウェブサイトがみられますが、当社からの情報ではなく、また、正確な情報ではないことがありますので、十分ご注意ください。
この治療は、2つの物質を結合させた薬剤を患者さんに投与したうえで、がんの患部に光を当ててがん細胞だけを破壊する、というこれまでになかった仕組みの治療です。
2つの物質とは、
①がん細胞の表面に多く見られるタンパク質にくっつく抗体
②光に反応してがん細胞を破壊するエネルギーを出す物質
です。
投与して24時間ほど経つと、この薬がターゲットのがん細胞に結合します。そこに「近赤外線」という人体には無害な光を当てると、薬剤が化学反応を起こしてくっついているがん細胞に穴を開けて破壊するというものです。
そして、この空いた穴から、体内の免疫を誘導するような物質が放出されて免疫の働きが強まり、二次的に全身的な治療効果も期待されるそうです。このことから「光+免疫」療法の名前がついています。
ただ、光免疫療法は、光を当てた部分=局所のがんへの効果は確かめられているものの、実は免疫療法の効果(全身的な効果)があるかどうかは人ではまだ確認されていません。
理論的な話と、動物実験ではそうした効果が確認できたという段階です。
局所治療としての効果も高いので、それだけでも有用な治療と言えそうですが、加えて今後免疫療法としての効果も実証され、転移した進行がんの治療としても使えるようになることを期待したいと思います。
光免疫療法の治験情報(国立がん研究センター東病院ホームページ)↓
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/clinical_trial/patient/head/20181226104430.html