東京都では連日150〜200人前後の新規感染者が出て、第2波が懸念されている新型コロナウイルス感染症。
一方で少しずつではありますが、その病態も解明されてきているそうです。そのひとつとして、新型コロナウイルス感染症の重症化には、どうも私たちの体の免疫が暴走してしまうことが関係している、ということが分かってきています。
免疫は、生まれながらに私たちの体に備わっていて、細菌やウイルスなどの外敵や、体内に発生したがん細胞などの、体に害をなすものを攻撃・排除してくれる働きです。
例えば、風邪などのウイルスが体内に侵入すると、マクロファージや樹状細胞と呼ばれる免疫細胞がかけつけて、病原を初期攻撃するとともに敵の情報を集めます。
集めた情報をT細胞という免疫細胞に伝え、それが攻撃力の高いキラーT細胞となって、ターゲットとなるウイルスをめがけて集中攻撃します。
さらに、B細胞というタイプの免疫細胞は、「抗体」という、ウイルスにくっつく物質を作り出します。抗体がくっついたウイルスは細胞に感染できなくなり、さらに抗体が他の免疫細胞を活性化し、ウイルスへ呼び寄せて攻撃するように仕向けます。
私たちの体は、侵入してきた病原に応じた抗体を作るので、抗体を調べればその病原が体内にいるかどうかがわかります。テレビで「抗体検査」で新型コロナウイルス感染症にかかっているかどうかを判別すると言っているのはこのことです。
今回の新型コロナウイルス感染症では、肺で過剰炎症が起こり、多臓器不全に至って死亡するケースが報告されています。そのひとつの原因として、免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが過剰に放出される「サイトカインストーム(サイトカインの嵐)」と呼ばれる状態になって、免疫細胞が制御不能になり、自分の細胞まで傷づけてしまう現象が起こっているとされています※。
サイトカインとは、細胞から放出される情報伝達をになう物質で、免疫細胞では細胞の増殖や活性化を促してウイルスなどと闘う体制を作ります。
このサイトカインストームが新型コロナウイルスでなぜ引き起こされるのか、どういう人に起こるのかなど詳しいことはまだ分かっていません。
ただ、高齢者や基礎疾患を持っている人が重症化しやすく、若い人が重症化しにくいことを考えれば、基本的な免疫力が正しく健全に機能していることが、このサイトカインストームを起こりにくくしているのではないかと想像します。
※【参考】日本癌治療学会ホームページ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療について(医療従事者向け)Q&A 免疫とウイルス感染との関わり