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免疫はどうやって私たちの体を守っている?

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2021.03.16

免疫がどのように体を守ってくれているのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
多くの人は、「免疫=防御」と考えているかもしれません。

 

免疫の働きを担う中心となるのが、血液の中に含まれる「白血球」という細胞です。
この白血球が、体に害を与えるさまざまな病原に対して攻撃し、やっつけることで体を守ってくれるのです。

たとえば、ウイルスが鼻や口から侵入すると、まずはのどの粘液や粘膜に付着します。
ウイルスは、そこから更に体内へ侵入しようとするわけですが、ここで第一の免疫システムが活躍します。

最前線で自国を守るパトロール隊と考えてください。
パトロール隊は、 敵を見つけ出し、発見次第すぐに攻撃し、排除してくれます。この最前線のパトロール部隊の攻撃は、専門用語で「自然免疫」と言います。

 

また、最前線パトロールから逃れた、より手強い敵を倒すために、さらなる精鋭部隊も結成されます。
精鋭部隊は敵であるウイルスの特徴を覚え、目印にして体内を捜索して攻撃。敵の特徴を覚えるために少し時間を要しますが、その分攻撃は強力です。

精鋭部隊は、敵に応じてその都度隊員を獲得するので、専門用語では「獲得免疫」と呼ばれています。

この精鋭部隊は、敵を制圧したら解散してしまいますが、完全に体の中からなくなるわけではありません。部隊の記憶に残り、将来、同じ敵が現れた際に速やかに再結成されます。

新型コロナウイルスと戦うことが得意なA隊員たちがいて、体からウイルスを駆逐して一旦解散したとしても、ふたたび同じコロナウイルスが攻めてきた際には、「コロナといえばA隊員を呼べ~!」と招集されるわけです。

 

ここで、最前線パトロール(自然免疫)と精鋭部隊(獲得免疫)で活躍する隊員たち(免疫細胞)についてご紹介します。

 

敵の出現とともに攻撃してくれるパトロール隊は、マクロファージや好中球といった食細胞(しょくさいぼう)が中心となります。食細胞とは、ウイルスや細菌などを自分の細胞内に取り込み、消化して破壊する細胞のことです。ウイルスに限らず、細菌などの異物や、正常な細胞が悪性化してできたがん細胞も同様に攻撃し、やっつけてくれます。

また、「ナチュラルキラー(NK)」細胞なども最前線部隊として働く細胞のひとつです。
ウイルスが感染した異常な細胞は、普段とは異なる”特有な顔つきに”に変わるのですが、この変化を素早くキャッチして攻撃してくれるのが、NK細胞なのです。NK細胞は異常な細胞にとりつき、つぎつぎと殺していくので「殺し屋」と異名があるほどです。

 

最前線パトロール部隊に続いて働く精鋭部隊では、敵の特徴を分析し、それを識別するための目印を兵士に伝え、攻撃を開始します。こうした敵の特徴を伝えることは、パトロール隊の食細胞であるマクロファージなども行っていますが、マクロファージの親戚である樹状細胞(じゅじょうさいぼう)という細胞が、分析能力と指令能力に最も長けているといわれています。

樹状細胞は、ウイルスやがん細胞を食べて細胞内で消化し、十分に吟味したうえで敵の識別に重要な情報と攻撃指令を出します。樹状細胞が精鋭部隊の司令塔といえる存在なのです。

 

そして、指令を受けて攻撃をするのが、「リンパ球」と呼ばれる細胞です。
「リンパ球」は、皆さん聞いたことがあるかもしれませんが、リンパ球には大きく分けて「T細胞(Tリンパ球)」と「B細胞(Bリンパ球)」のふたつがあります。

T細胞は、さらに細かく分けられますが、敵を攻撃する上でとくに重要なのが、ヘルパーT細胞とキラーT細胞です。

樹状細胞

リンパ球

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 食細胞(マクロファージ・好中球など)……ウイルスなどの病原体を細胞内へ取り込み、消化して破壊する(パトロール隊)
  • 樹状細胞……食細胞の一種で、ウイルスやがん細胞を取り込んで、T細胞へ敵の特徴を伝えるとともに攻撃指令を出す(司令塔)
  • ヘルパーT細胞……樹状細胞から指令を受けて、キラーT細胞とB細胞を支援する(精鋭部隊)
  • キラーT細胞……ヘルパーT細胞の支援や樹状細胞の司令を受けて、異常細胞への直接攻撃を行う(精鋭部隊)
    NK細胞……異常な細胞をすばやく発見し、攻撃を行う(パトロール隊・殺し屋)

 

こうした細胞はすべて「白血球」という血液の細胞の一種です。

これらの細胞たちが見事に連携することで、体に害を与える敵を見つけ、攻撃して、私たちの体を守ってくれているのです。

 

【参考図書】
後藤重則医師, 家族を守る免疫入門, KAWADE夢文庫,2020.

 

 

 

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