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「自分自身」と「自分以外」を見分けて体を守る免疫の働き

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2022.02.21

 

私たちの体は、細菌やウイルスなどの侵入を阻止するため、「免疫」と呼ばれる防御システムが備わっています。免疫は体の外から入ってくる敵だけでなく、体を内側から生じるがん細胞を攻撃する役割も果たします。
しかし時として、免疫システムが自分自身を攻撃してしまうケースもあります。これが自己免疫疾患です。なぜ自分を守るはずの免疫が自己を攻撃してしまうのでしょうか?

免疫は自分と自分以外を見分けるところから始まる

そもそも免疫とは、自分と自分以外を見分けて、自分以外のものを排除する体の防御反応です。そのため、免疫が正常に機能していれば、普通は自己を攻撃することはありません

ここでいう自分(自己)とは、自分の正常な細胞や臓器などのことを指し、自分以外(非自己)とは体の外から入ってくるウイルスや細菌といった病原や、体の中から生じて害をなすがん細胞などがそれにあたります。

免疫は、お母さんのお腹の中にいるころから備わっています。お母さんと胎児とをつなぐ胎盤にはバリア機能が備わっており、胎児へ送られるのは栄養と血液です。細菌やウイルスといった病原体の侵入を阻止するため、胎児の細胞は自己を覚えて自分以外のものを攻撃するように教えられます。

免疫を担っているのは主に、T細胞と呼ばれる免疫細胞です。T細胞が誤って自分を攻撃してしまった場合、すぐに死滅させられる仕組みが備わっており、自分を攻撃しないよう徹底的に教育されています。

T細胞は、侵入者を攻撃するキラーT細胞と、それを制御するT細胞(制御性T細胞といいます)の大きく2種類に分類されます。キラーT細胞が暴走すると、自分の細胞まで攻撃してしまう場合があるため、制御性T細胞がそうならないようにコントロールする仕組みです。

 

自己免疫疾患がおきる理由

胎児の時期に自分と自分以外を学んでいるため、免疫は正常に機能していれば、自分を攻撃することはないと説明しました。しかし例外として免疫が誤って自分を非自己と認識して攻撃してしまうケースがあり、自己免疫疾患が起こることがあります。

自己を非自己と認識してしまう理由は、まだ解明されていません。今の段階では、自分の細胞と似た特徴を持つ病原体が体内に侵入することで、間違えて自分の細胞まで攻撃してしまうのではないか、と考えられています。

 

あの病気も自己免疫疾患!?意外と知られていない病気

有名な自己免疫疾患には、関節リウマチバセドウ病円形脱毛症などがあります。円形脱毛症は、今までストレスが原因と考えられていましたが、実は自己免疫疾患の一種であることが分かってきたそうです。

また、難病に指定されている潰瘍性大腸炎も、自己免疫疾患の一つです。潰瘍性大腸炎とは、大腸の内壁に傷ができて炎症が起きる病気です。炎症によって痛みが起こったり、傷から出血したりして、腹痛や血便を引き起こします。

潰瘍性大腸炎は1,000人に1人の割合で起こり、発症年齢は若者から高齢者までさまざまです(※1)。詳細な原因はまだ不明とのことですが、腸内環境が変化して大腸の粘膜のバリアが破綻し、免疫機能に異常が起こることが原因と考えられているそうです。

大腸は体内にあるものと思われがちですが、実は肛門や口を通して外部とつながっています。そのため大腸の粘膜には、細菌やウイルスなどの侵入者から、体を守る免疫が備わっているというわけです。

潰瘍性大腸炎を引き起こす大腸粘膜のバリアの破綻は、食事バランスの変化や腸内細菌の乱れによって起こると考えられています。食生活や生活習慣の乱れは、免疫の働きを乱す原因になります。日頃から規則正しい生活とバランスの取れた食事を心がけたいですね。

 

【参考文献】
※1)難病情報センターホームページ「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」
https://www.nanbyou.or.jp/entry/62
後藤重則医師「家族を守る免疫入門(KADOKAWA夢文庫)」2020.

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