日本人の2人に1人が一生のうちにがんと診断され、男性は4人に1人、女性は6人に1人ががんで亡くなるそうです(※1)。がんは日本人の死因トップ(※2)でもあり、「がんは怖い病気」とのイメージがあります。
なぜがんが発生するのか、その原因やがん細胞から体を守る仕組みについて調べてみました。
がんの原因は遺伝子の異常
がんは、体内に発生したがん細胞が増えて塊になることで正常な細胞を侵食し、臓器が正しく機能できなくなることで死に至る病気です。
そもそもがん細胞が発生するのは、正常な細胞の中にある、体の設計図といえる遺伝子に異常が起こることが原因といわれています。
通常、細胞は1つから2つ、2つから4つと分裂してどんどん新しい細胞を作っています。私たちの体は約38兆個もの細胞からできているといわれており、1日で1%の古い細胞が死に、その分新しい細胞を産み出しているとされています(※3)。
そうした過程で、何らかの理由で細胞の遺伝子に異常が生じ、その異常な細胞が分裂して増えてしまうことで、がんになるといわれています。
がん細胞が厄介なワケ
正常な細胞は、一定回数分裂したら自動的に死滅するようにプログラムされています。そのため、細胞が増えすぎてしまうことはありません。
しかし、がん細胞には正常な細胞のように制御機能がなく、際限なく分裂し、増えていきます。増えすぎたがん細胞は、塊となってさらに大きくなっていきます。
がん細胞が厄介な理由は、浸潤と転移と呼ばれる現象があるためです。浸潤とは、がん細胞が正常な細胞の間に広がって、自分の陣地を広げることです。がん細胞が浸潤すると、その臓器は正常に機能できなくなります。
転移とは、血管やリンパ管にがん細胞が侵入し、血液やリンパ液にのって全身へ流れていき、最初にがん細胞が発生した場所から離れた場所に移動することです。正常な細胞は大腸の細胞なら大腸で、胃の細胞なら胃でしか増殖できませんが、がん細胞は全身どこでも増殖できてしまうので厄介なのです。
免疫ががん細胞の芽を摘んでいる
がん細胞は、遺伝子に病的な異常が生じることで発生しまいます。しかし、遺伝子に異常が起こるとただちにがん細胞ができるわけではありません。私たちの体にはこの遺伝子の異常を修復する機能が備わっています。細胞の遺伝子に異常が生じた場合、体は自動的に異常を修復して正常に戻します。
ただし、こうした異常は日々膨大な回数起こっているとされていて、すべての異常が修復されるわけではありません。なかには修復されないままになってしまうこともあるそうです。そうなったときは「免疫」の出番です。
異常な遺伝子を持った細胞は、正常な細胞にはない異常なタンパク質を作ります。私たちの体に備わった免疫は、この異常なタンパク質を目印として、正常な細胞でないことを見分けて攻撃し、がん細胞の芽を摘んで体を守ってくれているのです。
免疫が、どのようにしてがん細胞などから体を守っているかは、以前のブログにも書きました。
がん細胞が発生してしまったら、がんが進行していずれ死に至ると思われがちです。しかし、体内では自分でも気づかないうちに免疫細胞ががん細胞を見つけ、排除してくれています。だからこそ、がんに対抗するには免疫の力が重要なのです。
【参考文献】
※1)国立研究開発法人国立がん研究センター「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
※2)厚生労働省「死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html
※3)東京都福祉保健局「がんって何?」
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/gan_portal/research/about.html
後藤重則医師「家族を守る免疫入門(KADOKAWA夢文庫)」2020.