11月下旬、東芝が、血液を用いて、乳がんや膵臓がんなど、13種類のがんを識別することに成功したと発表しました。
血液中に存在する「マイクロRNA」という成分を分析することで、がんにかかっているかどうかを、たった2時間で99%の精度で判別できたそうです。
まだ研究段階の成果ですが、ニュースによると2020年には実証実験を開始して、21〜22年の実用化を目指すそうです。
日本経済新聞「血液1滴でがん検査 東芝、21年にもキット実用化」
こうした、血液や尿などの液体からがんを診断する方法を「リキッドバイオプシー」といい、実用化に向けて様々なところで研究が進められています。
血液でがんを調べる方法としては、これまでも「腫瘍マーカー」というものがあり、それとの違いがわからないという人もいると思います。
がんが体内にできると、特殊なタンパク質やホルモンなどが血液や排泄物中に増加し、これを腫瘍マーカーと呼んでいます。腫瘍マーカーは多くの種類がありますが、ストレスや他の疾患など、がん以外の理由でも数値があがることがあり、逆に本当はがんが存在するにも関わらず検査では正常値となるといったケースも多く、これだけで正確にがんを診断するのは難しいといえます(ですので、一般的に他の画像検査などと組み合わせて判断に使われます)。
一方で、「リキッドバイオプシー」として実用化が目指されているものは、血液等の検査だけで高い精度でがんを発見できることを目指しています。
組織を取る必要がないので患者さんの負担も少なく、まだ画像に映らないような段階の超早期がんの発見も期待されています。
また、がん細胞の遺伝子的な特徴も調べられるため、健康な人の検診に役立つだけでなく、患者さんの手術後の再発のモニタリングや、それぞれのがん細胞の特徴に応じて分子標的薬を選ぶといったことも、従来にないくらい簡単にできるようになると期待されているのです。
こうした技術によって、画像で場所を特定できないような超早期のがんが見つかったとき、その治療には全身的な治療法(薬物療法など)が必要になりますが、日常生活に影響を与えるような副作用が強い抗がん剤は適さないと思います。
せっかく、がん細胞が小さいうちに見つけられる技術が実用化されるなら、副作用なく超微小ながん細胞を退治できるような治療が望ましいです。
そのひとつとして「免疫療法」に大いに期待したいところです。