新年、あけましておめでとうございます。
当会会員の皆様、当ホームページを訪問いただいた皆様にとって、良い年になりますようお祈りします。
さて、がんが、正常な細胞の中の遺伝子に異常が生じて発生する病気だということは、一般の人にも徐々に知れ渡ってきました。
「遺伝子の異常」とひとくちに言っても、膨大な数の遺伝子のどこに異常が起こったかによって、がんの性質が変わってきます。2019年は、この遺伝子の異常を検査で見つけて、ひとりひとりに最適な薬を選択して、効果が高いがん治療を行おうという「がんゲノム医療」が本格的にスタートした年となりました。2020年はさらにこの流れは加速していくものと思います。
そんな中、厚生労働省は、第3回がんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議(12月5日開催)で、19年6月に公的保険適用となった「遺伝子パネル検査」の実態調査の結果を報告しました。
遺伝子パネル検査の実態把握調査の報告(厚生労働省健康局 がん・疾病対策課)
それによると、6月1日~10月31日までの5ヶ月間でパネル検査を受けた患者は805人で、このうち新しい薬がみつかり、治療に結びついた患者さんは88人(約11%)だったそうです。
遺伝子パネル検査は、数百種類の遺伝子を調べて異常を見つけ、その結果に応じて新しい薬を見つけようとするもので、2種類の検査システムが公的医療保険で受けられるようになっています。ただし、その対象者は、がんが再発したり進行したりして標準的な治療がない患者さんに限られています。
11%とはいえ、もう打つ手がないと言われた患者さんがこの検査によって新たに治療が見つかったことは、大きな進歩でしょう。
ただし、このパネル検査で新しく見つかる薬は、適応外使用や未承認薬の場合も多く、公的保険が使えないので、その場合患者さんは自費で治療を受けることになります。分子標的薬などは、全額自費だと1ヶ月で100万円を超えるものも少なくありません。
保険で検査を受けて薬が見つかったと喜んだのもつかの間、その後のあまりにも大きい経済的負担が患者にとって大きなジレンマとなります。
もちろん、パネル検査を行っても手立てが見つからない9割の患者さんはどうするのか、ということも問題です。
がんゲノム医療は、がん治療の大きな変革であり画期的なことですが、スタートしたばかりで道半ば。今回の実態調査も踏まえて改善点を検討して、技術の進歩で可能になったがんゲノム医療を、実際に多くの患者さんに役立つものにしていただきたいと思います。