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【News Pick up】 肺がんに対するがん免疫療法の治療効果改善に向けた研究成果

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2020.02.11

今回は最近国立がん研究センターから発表された、免疫療法の効果を高めることにつながる研究成果のニュースです。 国立がん研究センターは2月4日に、名古屋大学の医師の研究グループが、EGFR遺伝子陽性の肺がんに免疫療法が聞きにくい原因を明らかにしたと発表しました。

プレスリリース「肺がんの新たな治療戦略へ期待 ~免疫療法の治療効果の改善へ~」

 

がん発症には遺伝子が深く関わっていて、そのひとつがEGFRという遺伝子です。この遺伝子の一部に遺伝子変異がある(遺伝子変異陽性)と、細胞を増殖させるスイッチが常にオンとなっているような状態となり、がんを引き起こします。

国立がん研究センタープッレスリリース「免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与(2016年8月9日)」より

抗PD-1抗体薬などの免疫療法薬は肺がんでの有効性が示されているものの、日本人にはEGFR変異陽性の肺がんの患者さんが多く、こうしたがんではがん免疫療法が効きにくいことが報告されていました。

今回の研究で、EGFR遺伝子変異のあるがん細胞が『制御性T細胞』を呼び寄せ、一方、『がん細胞傷害性T細胞』を遠ざけることで、自分の身を守っていることが明らかになったそうです。

 

T細胞というのは私たちの体を守ってくれている免疫細胞の1種で、ざっくり分けると3つのタイプがあります。

 

『キラーT細胞』・・・ウィルスや細菌、がん細胞などを直接攻撃する、名前の通りの「殺し屋」。

『ヘルパーT細胞』・・・キラーT細胞に攻撃司令を出したり、攻撃を支援する細胞。

『制御性T細胞』・・・攻撃部隊のT細胞の活動を抑える細胞

 

キラーT細胞などが活性化していると敵への攻撃力が高まる一方で、あまり過剰に働きすぎると自分の正常な細胞を攻撃してしまうこともあり(自己免疫疾患といいます)、制御性T細胞がうまくバランスをとっているんですね。

がん細胞は、このT細胞の働きを自分に有利なようにコントロールして、自分を攻撃するキラーT細胞は遠ざけて、自分を守ってくれる制御性T細胞を多く引き寄せるようにしているそうです。なんと悪賢い!

こうしたがん細胞の働きを抑えた上で免疫療法を行えば、さらに効果が高まるであろうとのこと。遠からずこうした治療方法が取り入れられるものと期待します。

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