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2とおりの方法で敵を攻撃する免疫の精鋭部隊

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2021.04.04

 

前回は、免疫は最前線パトロール部隊(自然免疫)と精鋭部隊(獲得免疫)の二段構えで、体を守っていることを書きました。

 

そのうち、敵の特徴を覚えてねらい撃ちする獲得免疫は、主に「液性免疫(えきせいめんえき)」と「細胞性免疫(さいぼうせいめんえき)」と呼ばれる2つの方法で攻撃します。

 

まず、ウイルスなどの外部から侵入してきた異物に対しては、「抗体(こうたい)」と呼ばれるミサイル攻撃が中心です。

抗体は、前回ご紹介したさまざまな免疫細胞のうち、B細胞によって作られます。このミサイルがとても高機能で、ただやみくもにミサイルを打つのではなく、特定の敵の目印に対して打ち込まれるように設計されています。追尾型ミサイルと考えてください。

 

敵の目印情報を得たB細胞は、目印に向けて抗体をどんどん作り放出。放出された抗体は、体中をめぐり、体内のどこにいる敵に対しても攻撃してくれるのです。
この攻撃は、液体のなかに溶けて抗体が働いて攻撃するので「液性免疫」と呼ばれています。

 

いっぽうで、がん細胞やウイルスに感染してしまった異常な細胞に対しては、主にT細胞のなかのキラーT細胞が直接攻撃を行います。このキラーT細胞も、敵の情報を得て、その敵の目印をめがけて攻撃します。
これが「細胞性免疫」です。

 

  • 液性免疫:敵の情報を受け取ったB細胞が抗体を作り、抗体が体中を駆け巡りミサイル攻撃
  • 細胞性免疫:体に害となる異常な細胞の情報を受け取ったキラーT細胞が直接攻撃

 

ウイルスは、実は自分自身では増えていくことができません。自己修復や複製をする機能を持っていないのです。では、どうやって増えていくのかというと、ほかの生物の細胞を借りて増えていくのです。

私たちの口や鼻から入ったウイルスは、のどの粘膜の細胞に付着します。そして細胞の内部に侵入します。細胞内に入ったウイルスは、その細胞を利用して自分を複製していきます。ウイルスが侵入し、ウイルスに乗っ取られてしまった細胞は、もはや正常な細胞ではありません。体に害をなすものとして、免疫の攻撃対象となります。

 

免疫は、ウイルス感染した細胞を攻撃するときに、どのように見分けるのか?その方法は2つあります。

ひとつは「顔つき」です。
ウイルスに感染した細胞は、通常の細胞と外見が異なります。
がん化した細胞も同様です。
正確に言うならば、ストレスによって出現するタンパク質が細胞表面に出てくることで見分けられます。

 

もうひとつは、
細胞は、細胞内のタンパク質、とくに異物であるタンパク質を細胞の表面に掲げる機能を持っています。
細胞自体が「この細胞のなかにウイルスがいるぞ」と外見から教えてくれるわけですね。
ウイルスがどれだけ細胞のなかに隠れていても、細胞自体が教えてくれるため、ウイルスは見つかってしまいます。

 

改めて整理してみます。

パトロール隊(自然免疫)による攻撃
外部からウイルスが侵入してきた場合、マクロファージや好中球、樹状細胞などの食細胞が食べて細胞内で消化。粘膜の細胞にウイルスが入り込んだ場合、感染した細胞を、異常を察知したNK細胞などが破壊

精鋭部隊(獲得免疫)による攻撃
ウイルスを食べた樹状細胞などがウイルスの特徴を伝え、T細胞に攻撃指令。B細胞が抗体を作ってミサイル攻撃(液性免疫)。同時に、キラーT細胞はウイルスに感染してしまった細胞を直接攻撃(細胞性免疫)。

 

このように、さまざまな攻撃方法で、免疫は私たちの体を守ってくれているのです。

 

【参考図書】
後藤重則医師, 家族を守る免疫入門, KAWADE夢文庫,2020.

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