遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
がんと闘っている全ての患者さん、ご家族の皆様にとって、明るい1年になりますことを願います。
今回は、抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬で効果が現れなかった患者さんが、直後に免疫細胞治療を受けて高い効果が出た、という事例が報告されており、ご紹介したいと思います。
患者さんは、4期(ステージⅣ)の進行腎盂がんの70代の女性。
腎盂とは腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管状の臓器で、尿管と繋がっています。腎盂がんは、他の多くのがんと同じく、早期では目立った自覚症状は出ないことが多く、がんが大きくなってくると血尿などの症状が出てきます。この患者さんも血尿が見られ、受診したところがんが見つかったそうです。
既に肝臓や肺に転移があって手術ができない状態だったため、抗がん剤(化学療法)と免疫チェックポイント阻害薬のひとつであるキイトルーダで治療を行いましたが効果がなく治療は中止に。しかしその後、免疫細胞治療を行ったところ著効し、肝転移、腎盂ともにがんが縮小したそうです。
これは免疫チェックポイント阻害薬のあと、まもなくして免疫細胞治療を開始したことが良かったのではないかと考えられるそうです。
免疫は、がんの発症を防ぐだけでなく、治療を行う上でも非常に重要ということが常識となりました。そして免疫チェックポイント阻害薬という、体の免疫力を利用するがん治療薬が登場して10年弱。今ではさまざまながんの治療で使われるようになっています。
ただ、免疫の仕組みは複雑なので、有効に働くためにさまざまなポイントがあり、残念ながら免疫チェックポイント阻害薬のみで効果が得られない患者さんもいます。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫が働きにくくなっているブレーキを外す薬です。
上記のケースでは、それだけでは上手く免疫を働かせることが出来なかったものの、免疫チェックポイント阻害薬の効果が残っているうちに、免疫細胞治療の効果が加わったのが良かった可能性があります。
こうした組み合わせの治療効果を明らかにするための臨床研究が行われており、現在研究参加いただける患者さんの募集が行われています(治療費は無償)。
▼臨床研究を行っている医療機関のページ
免疫チェックポイント阻害剤の治療後の方を対象に、免疫細胞療法(アルファ・ベータT細胞療法)の安全性および有効性を確認する臨床研究
【参考】
・国立がん研究センター東病院 腎盂・尿管がん
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/urology/070/010/030/20210517153038.html