お知らせ

「日本免疫治療学会」学術集会への参加レポート

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2020.02.28

当会は、名称の通り「免疫の力」を用いたがん治療に注目し、患者立場として治療の普及啓発や情報共有に取り組んでいます

そうした一環として、2月22日(土)に東京大学 伊藤国際学術研究センターで開催された、第17回日本免疫治療学会学術集会に参加してきましたので概要ですがレポートします。

一般向けではなく、医療者による研究成果報告なので内容は専門的ですが、10数個の演題が発表され、がん免疫療法にまつわる最新の研究を知るには良い機会でした。

 

免疫の働きを基軸にしたがん治療は、オプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬以外にも、さまざまあります。

今回の発表の中でも、免疫チェックポイント阻害薬のほか、CAR-T細胞療法、光免疫療法、免疫細胞療法、ペプチドワクチンなどそれぞれの分野で、さらに効果的な治療を開発しようとする医師や研究者の最新の取り組みが紹介され、がん免疫療法の広がりを感じました。

 

がん免疫療法は、その手法は色々ありますが、ようは、「体の中で、免疫細胞がきちんとがん細胞を見つけ出し、攻撃できるようにする」ということを目的にしています。
そもそもわたしたちの体は、そういう働きを持っているのですが、がん自身が免疫の攻撃から逃れようとする力などによって、攻撃が上手く行っていなかったりするのです。

そして、会では「がん免疫療法」に共通する現在の課題について、それをクリアするための取り組みが報告され、意見交換がなされていました。

 

  • 免疫チェックポイント阻害薬なども20〜30%程度の患者さんにしか効かないが、効かない場合の理由がまだはっきりしていない。
  • 効果が見込める患者さんとそうでない患者さんを事前に判別する方法がまだない。
  • がん細胞を免疫細胞に攻撃させる際の、がん細胞だけがもつ有効な目印を見出すのに苦労している。
  • 抗がん剤などと同様に、がん細胞が治療への耐性をもつことがある。
  • 免疫の力を強めようと免疫細胞を培養・増殖すると、その細胞が疲弊してしまう。
  • 患者さん自身の免疫細胞(自家細胞)を採取して強化して治療に使うと時間・費用ともにかかる。一方、他人の免疫細胞(他家)によるiPS細胞などを使うと、拒絶反応が起こる。

 

こうしたそれぞれの課題を解決するために、がんセンターや大学病院等の先生方が、さまざまなアイディアと努力により、研究を進めてくれていることが見て取れました。

研究段階の内容ですし、専門的な部分も多いので(私自身理解が追いつかないところもあり!)個々の詳しい内容は書きませんが、こうした研究成果がいち早く実際の治療として患者に届くよう、期待しています。

ブログ記事一覧に戻る

【News Pick up】 肺がんに対するがん免疫療法の治療効果改善に向けた研究成果

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2020.02.11

今回は最近国立がん研究センターから発表された、免疫療法の効果を高めることにつながる研究成果のニュースです。 国立がん研究センターは2月4日に、名古屋大学の医師の研究グループが、EGFR遺伝子陽性の肺がんに免疫療法が聞きにくい原因を明らかにしたと発表しました。

プレスリリース「肺がんの新たな治療戦略へ期待 ~免疫療法の治療効果の改善へ~」

 

がん発症には遺伝子が深く関わっていて、そのひとつがEGFRという遺伝子です。この遺伝子の一部に遺伝子変異がある(遺伝子変異陽性)と、細胞を増殖させるスイッチが常にオンとなっているような状態となり、がんを引き起こします。

国立がん研究センタープッレスリリース「免疫を司るHLA遺伝子など6遺伝子領域が関与(2016年8月9日)」より

抗PD-1抗体薬などの免疫療法薬は肺がんでの有効性が示されているものの、日本人にはEGFR変異陽性の肺がんの患者さんが多く、こうしたがんではがん免疫療法が効きにくいことが報告されていました。

今回の研究で、EGFR遺伝子変異のあるがん細胞が『制御性T細胞』を呼び寄せ、一方、『がん細胞傷害性T細胞』を遠ざけることで、自分の身を守っていることが明らかになったそうです。

 

T細胞というのは私たちの体を守ってくれている免疫細胞の1種で、ざっくり分けると3つのタイプがあります。

 

『キラーT細胞』・・・ウィルスや細菌、がん細胞などを直接攻撃する、名前の通りの「殺し屋」。

『ヘルパーT細胞』・・・キラーT細胞に攻撃司令を出したり、攻撃を支援する細胞。

『制御性T細胞』・・・攻撃部隊のT細胞の活動を抑える細胞

 

キラーT細胞などが活性化していると敵への攻撃力が高まる一方で、あまり過剰に働きすぎると自分の正常な細胞を攻撃してしまうこともあり(自己免疫疾患といいます)、制御性T細胞がうまくバランスをとっているんですね。

がん細胞は、このT細胞の働きを自分に有利なようにコントロールして、自分を攻撃するキラーT細胞は遠ざけて、自分を守ってくれる制御性T細胞を多く引き寄せるようにしているそうです。なんと悪賢い!

こうしたがん細胞の働きを抑えた上で免疫療法を行えば、さらに効果が高まるであろうとのこと。遠からずこうした治療方法が取り入れられるものと期待します。

ブログ記事一覧に戻る