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がんの予防につながるワクチン

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2022.01.31

 

がんを予防できるワクチンがあったらいいのに、と思ったことはないですか?
実は、がんの予防につながるワクチンはすでにいくつか開発され、実用化されています。
がんを防ぐワクチンとその特徴をご紹介します。

がん予防につながるワクチンにはどんな種類がある?

過去に類を見ないほど多くの人が新型コロナウイルスのワクチンを接種したおかげで、ワクチンや免疫といったものへの理解が広がっているように思います。

ワクチンは私たちの体がもつ免疫の働きを利用した、病気への対抗手段です。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、はしか、風疹など、さまざまな種類の病気に対するワクチンがありますが、そうした中で、がん予防につながるワクチンもいくつか実用化されています。代表的なものとしては、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)B型肝炎ワクチンが挙げられます。

子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんを予防するワクチンです。子宮頸がん以外にも、膣がんや肛門がんなどを予防する効果も知られています。日本における子宮頸がんの年間死亡者数は約2,800人です(※1)。近年、死亡数は増加傾向にあり、とくに50歳未満の比較的若い年代の発症が問題となっています。

B型肝炎ワクチンは、B型肝炎を予防して慢性肝炎や肝硬変、さらに肝がんへ進行することを防ぎます。世界保健機構(WHO)によると、世界では年間50万人〜70万人の人がB型肝炎で亡くなっています(※2)。

 

ワクチンで予防できない病気とその理由

子宮頸がんやB型肝炎のように、がんを予防できるワクチンがある一方、ワクチンを開発でされていないものもあります。たとえば、C型肝炎成人T細胞白血病(ATL)もウイルスへの感染が原因でがん発症につながりますが、現段階では有効なワクチンが作られていません。

C型肝炎は「C型肝炎ウイルス」への感染により、慢性肝炎や肝硬変、肝がんへと進展してしまう病気です。同じ肝炎ウイルスであるB型肝炎ウイルスのようにワクチンも作れるのでは、と思いますよね。しかしC型肝炎ウイルスに対して作られる抗体は、ウイルスの働きを抑制したり壊したりする能力が高くありません(※3)。
ATLは母乳や血液、体液を介してHTLV-1と呼ばれるウイルスに感染することで発症します。ATLに対するワクチンが未開発なのも、ウイルスに対する抗体は作られるものの完全にウイルスを排除できないからです(※4)。

 

子宮頸がんワクチンやB型肝炎ワクチンの効果

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することが原因で発症します。HPVワクチンは、子宮頸がんの50〜70%に相当する2種類のヒトパピローマウイルスに対して、予防効果があると考えられています。性交渉を介して感染するため、初めての性交渉前にワクチンを接種しておくことが重要です。3回の接種は必要ですが、公費により無料で受けられるワクチンです。

B型肝炎は血液や体液を介してB型肝炎ウイルスに感染することが原因となります。ウイルス感染を防ぐB型肝炎ワクチンは、3回接種で15年程度効果が持続します(※5)。とくに10代で接種すると、より高い効果を期待できます。
母から子へB型肝炎ウイルスが感染するのを防ぐため、国は2016年から0〜1歳児に対して定期接種を開始しました。定期接種と妊娠時検査の実施で、94〜97%の確率でB型肝炎の母子感染を防げると考えられています(※2)。

このように、子宮頸がんワクチンやB型肝炎ワクチンは一定の効果が認められたワクチンで、定期接種や公費対象となっています。

こうしたウイルスへの感染が原因で、ワクチンがあるがんは「撲滅が目指せるがん」と言われています。副作用の問題が指摘されることもありますが、正しい知識を持ってがんリスクを減らすために有効活用しましょう。

 

【参考文献】
※1)日本産科婦人科学会「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
※2)国立感染症研究所「B型肝炎とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/hepatitis/392-encyclopedia/321-hepatitis-b-intro.html
※3)国立感染症研究所「C型肝炎とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/322-hepatitis-c-intro.html
※4)後藤重則医師「家族を守る免疫入門(KADOKAWA夢文庫)」2020.
※5)厚生労働省「B型肝炎ワクチンの定期接種が始まります」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000134456.pdf

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コロナワクチンの効果が一生持続しない理由

カテゴリー:お知らせ,事務局ブログ 2022.01.14

ワクチンブースター接種のイメージ

 

日本では、2021年に新型コロナワクチンの接種が始まってから、半年あまりで日本の新型コロナワクチンの2回接種率は70%(※1)を超えました。
しかし厚生労働省は、一般市民に対する新型コロナワクチンの3回目接種の実施も検討しています(※2)。なぜ一度のワクチン接種で一生効果が持続しないのか、ワクチン接種を何度も実施するブースター接種の必要性について学んでみましょう。

新型コロナワクチンの効果は一生持続しない

新型コロナワクチンに限らず、感染症に対するワクチンは、基本的に一生効果が続くものではありません(※3)。

そもそもワクチンは、体に害がないウイルスの一部や死滅させたウイルスを使って、人体の免疫機能を利用して抗体を作らせる予防医療の一つです。抗体はウイルスの働きを抑制するため、万が一ウイルスに感染した場合もワクチン接種で作られた抗体が働いて、感染による症状を和らげます。また、細胞を戦闘部隊としてウイルスと戦う準備をさせるのがワクチンです。

ワクチン接種により作られた抗体は、異物が除去されると自然と血中から消えます。一方で、抗体を作った記憶は細胞に残り、再度同じ異物が侵入すると即座に対応するメカニズムです。

細胞が記憶しているなら、新型コロナワクチンは一生効果が持続すると思うかもしれません。しかし、細胞の記憶は時間の経過とともに薄れていき、効果も弱くなっていきます。

ワクチンの効果が一生続かない理由

前述のとおり、ワクチンによって作られた免疫は次第に弱くなり、最終的に再感染しても抗体が作られなくなります。 実はワクチンの効果が一生続かない理由は、それだけではありません。

ワクチンの効果は、ウイルスにある目印に対して効果を発揮するものです。つまり、ウイルス自体が変化して目印がなくなってしまうと、ウイルスが抗体や細胞による攻撃対象として認められなくなってしまいます。

実際に日本でも、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株やオミクロン株が確認されており、新型コロナワクチンを2回接種した人も感染することが報告されています(※4)。

ブースター接種の必要性と期待できる効果

新型コロナワクチンを2回接種しただけでは、時間とともに効果が薄れてしまうことは先にお話ししました。しかし、継続的にワクチンを接種することで、効果を長引かせることはできます。これがブースター接種と呼ばれるものです。新型コロナワクチンをブースター接種すると、その度に細胞の記憶が呼び覚まされることになります。

車の運転で例えると、長く自動車の運転をしていないとギアの入れ方やライトのスイッチの操作を忘れてしまいます。しかし、定期的に運転していれば、運転の仕方を忘れることはほとんどないでしょう。

新型コロナワクチンの接種でも、車の運転と同じことがいえます。細胞の記憶を定期的に刺激することで、抗体の作り方やウイルスへの攻撃の仕方を忘れにくくするのが、ブースター接種です。

現在、厚生労働省では新型コロナワクチンの追加接種を予定しており、希望者は3回目の接種ができるようになります。

がん治療中の患者さんは、治療内容やタイミングによっては感染や重症化リスクが高くなる場合がありますので、開始されたら速やかにワクチンの追加接種をされることをおすすめします。

 

参考文献
※1)政府CIOポータル「新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む))」(2022年1月6日時点)https://cio.go.jp/c19vaccine_dashboard
※2)厚生労働省「追加接種(3回目接種)についてのお知らせ」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_booster.html
※3)後藤重則医師「家族を守る免疫入門(KADOKAWA夢文庫)」2020.
※4)国立国際医療研究センター「新型コロナウイルス、オミクロン変異株に感染した11例の臨床経過とウイルス排出期間に関する報告」

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