7/22に、京都大学と近畿大学の研究グループが、がんの免疫療法「免疫チェックポイント阻害薬」の効果を予測できるプログラムを開発した、というニュースがありました。
免疫チェックポイント阻害薬はがん免疫療法のひとつで、がんによって抑えられている免疫本来の働きを復活させる薬です。
従来の抗がん剤や分子標的薬とは違う作用機序で、そうした薬が効かないがんでも効果が期待できるとして、さまざまながんで承認され、使用されています。当ブログをご覧になっている患者さんも、ニボルマブ(オプジーボ®)やペムブロリズマブ(キイトルーダ®)といった免疫チェックポイント阻害薬が使われていることをご存じだったり、実際に使われた方もいらっしゃると思います。
ただし、免疫チェックポイント阻害薬も実際に効果が得られる患者さんは2〜3割で、効くどうかの事前予測も難しいという課題もありました。
今回、研究グループは1万例のDNAデータを分析して、固形がん(血液がん以外のがん)を8パターンに分類し、その中で免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいがんが分かったそうです。
がんは、細胞の遺伝子に変異が起こることで発症する病気です。
こうした遺伝子の変異が多いがんは免疫療法が効きやすいことが分かっているので、これまでの効果予測は、主に遺伝子変異の量を調べて予測していました。ただし、こうした遺伝子変異の量が多くても効果がない場合や、逆に少なくても効果が出る場合があり、その精度が高くないことが課題でした。
そこで、1万例のDNAデータを分析して遺伝子変異の量ではなく、原因による特徴で分類したところ、遺伝子の変異が起こる原因がタバコや紫外線などの外的なものだと免疫チェックポイント阻害薬が効きやすく、加齢のような内的な要因だと効きにくいことが分かったそうです。これは臓器の種類は関係ありませんでした。
この、免疫チェックポイント阻害薬の効きやすい遺伝子変異の原因のタイプは全体の3分の1を占めるとのことなので、もともと知られていた「効果が現れるのは2,3割」とも合致している印象です。
(研究論文は、がん免疫領域の科学雑誌Journal for ImmunoTherapy of Cancerに掲載)
免疫チェックポイント阻害薬は薬剤費も高額であり、無駄な治療を行わずに済む意味でも事前に効果予測ができるのは有益なことで、今後は実際の治療現場で使えるようになることが期待されます。
とはいえ、効果が期待できないと判定された患者さんにとっては、有効な手立てがなければ引き続き課題です。
免疫チェックポイント阻害薬を行うも効果が出なかった進行がんの患者さんが、その後に単独で免疫細胞治療を行って著しい効果が出た事例が最近ありました。次回はその話を紹介させていただこうと思います。
【参考】
https://newscast.jp/news/2142996