乳がんの再発リスクをスコア化する検査が保険収載へ
2021年11月、乳がんの再発リスクを判定する遺伝子検査「オンコタイプDX」が保険適用になることが決まりました(12月1日付けで保険適用されることが決まっていましたが、メーカー側の開発が遅れて一時保留となったようです)。
乳がんに限りませんが、がんは早く見つけて早期に治療を行うほど完治できる割合は高くなります。
多くのがんでは一般的に5年再発がなければ完治とみなされるのに対して、乳がんは比較的がん細胞の増殖が遅く、5年以上経っても再発がままあるため、10年経たなければ完治とみなされません。
乳がんの再発を予防するための治療には、基本的に抗がん剤が行われます。
対象になるのは「再発の可能性が高いと判断された患者さん」ですが、再発の可能性が高いかどうかについては、リンパ節への広がりやがん細胞の悪性度、増殖の早いタイプかどうかなどを医師が総合的に判断します。 強く再発の可能性が懸念されるような場合もあれば、なんともいえない場合もあり、明確な基準があるわけではありません。
そこで、再発の可能性を判断するひとつの材料として、このオンコタイプDXという検査が開発されました。
21種類の遺伝子を検査して乳がんの再発リスクをスコア化するこのこの検査は、実はずっと以前からあったのですが、日本では公的保険の承認をされておらず、約40万円ほどの自費診療としてのみ行われていました。
ですので、主治医の先生もそれを患者さんに勧めることはあまりなく、ご存じない方も多かったと思います。
実際、私の家族がステージⅡの乳がんで手術を行った後、再発予防の治療を行うかどうか判断に迷ったときも、主治医の先生からこの検査の紹介は特にありませんでした。
副作用との兼ね合いで再発予防治療を行うかどうかの判断は難しい
抗がん剤の治療は、制吐剤の開発によって吐き気などの副作用は軽減されてきたものの、脱毛や手先などの末梢神経障害、倦怠感や白血球の減少などは生じることが多く、つらい副作用を伴うことにいまだ変わりありません。
再発をできるだけ防ぐことが大事とは分かっていても、実際に起こるかどうか分からない再発の予防目的で厳しい副作用を伴う治療に踏み出すのは、患者本人にとってはやはり難しい決断です。
副作用覚悟で再発予防の治療を行うのであれば、できるだけ明確な基準があったほうがいいですし、このオンコタイプDXももちろん100%の判断ができるものではありませんが、再発リスクをスコア化して検討材料にできるのは、大変有意義なことだと思います。
副作用の少ない治療も選択肢の一つに
そして再発を予防するための治療としては、抗がん剤のほかに、副作用が少ない免疫細胞治療も選択肢のひとつになり得るだろうと思います。
私たちの体に備わった免疫システムは、体の中で生じたがん細胞のもとをやっつけて、病気のがんになることを防いでくれていると考えられています。
自身の免疫細胞を強化するこの治療は、手術などの治療のあとに残ってしまった(かもしれない)微小ながん細胞を攻撃して、再発の芽を詰むことが期待できます。当会でも再発予防のために治療を受けた患者さんは大勢いますが、大きな副作用はほとんど見られません。
検診率を高めて早期発見を進めるとともに、早期治療を行ったあとのがん再発率を下げることができれば、日本のがん治療は大きく進歩するはずです。