厚生労働大臣へ要望書を提出いたしました
当会では、免疫細胞療法の健全な発展と患者負担の軽減に向けて、国に対して「研究促進」「患者負担の軽減 」「早期保険適用」の支援を要請する署名活動を行ってきました。
今般、1万筆の署名が集まったため、2019年6月26日(水)根本厚生労働大臣へ要望書・署名の提出を行ってまいりました。
あわせて、坂口力当会会長より、要望書の趣旨説明を行いました。
要望書はこちら。
免疫の力でがんを治す患者の会
〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台 2-1-45
ニュー駿河台ビル 3F
「免疫の力でがんを治す患者の会」
事務局
当会では、免疫細胞療法の健全な発展と患者負担の軽減に向けて、国に対して「研究促進」「患者負担の軽減 」「早期保険適用」の支援を要請する署名活動を行ってきました。
今般、1万筆の署名が集まったため、2019年6月26日(水)根本厚生労働大臣へ要望書・署名の提出を行ってまいりました。
あわせて、坂口力当会会長より、要望書の趣旨説明を行いました。
要望書はこちら。
がん免疫細胞治療と治療を受けた患者さんを取り上げたTVドキュメンタリーが放送されるそうです。
免疫細胞治療に関心をお持ちの患者さん、ご家族の皆さんの参考になると思いますので、ご案内いたします。
●放送日:2019年7月14日(日)14時30分~(再放送 7月21日(日)14時00分~)
●放送局:BS12トウェルビ
今や医療は自ら選ぶ時代に入っている。
標準治療に加えて免疫細胞治療を選んだ
二人の患者は今後、どうやってがんと共存していくのか?
新たながん治療と患者の「今」に密着した。(番組HPより抜粋)
番組HPはこちらからご覧いただけます。→番組公式ホームページへ
治療や薬の進歩で、比較的早期のがんは治癒も見込める時代になってきましたが、進行がんを完治させるのはまだまだ困難という現実があります。
そうしたとき、がんと共存しながらも、できるだけQOL(生活の質)を下げずにこれまでどおりの日常を送るということが、私達患者にとってのひとつの目標であり、願いであると思います。
この度、下記住所に移転し、新事務所において運営を行う運びとなりましたので、 ご案内申し上げます。
また、移転に伴いまして、電話番号・FAX 番号が変更となります。
● 新住所
〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台 2-1-45 ニュー駿河台ビル 3F
● 新電話番号・FAX 番号
電話:03-6273-7385
FAX:03-6273-7386
以前の事務所あてにお送り頂いている書類等は、新事務所に転送されております。
今後とも、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2018年7月15日(日)13時15分より、石川県 金沢市の北國新聞会館20階ホールおいて、「免疫の力でがんを治す患者の会」第4回市民セミナーin金沢を開催致しました。
当日は約171名の方にお集まりいただき、まず、坂口力会長(元厚生労働大臣)が講演し、その後実際に免疫細胞療法を提供している水腰英四朗先生(金沢大学医薬保健研究域医学系 准教授)、宮下知治先生(金沢大学附属病院肝胆膵移植外科 助教)による講演をお聞きいただきました。
その後は、休憩をはさんで免疫細胞療法に関心を持っている方々が坂口会長、水腰先生、宮下先生他、医療関係者・治療経験者を囲み、気軽に相談できる“茶話会”を行いました。
免疫細胞療法を提供する複数の医療機関から先生方に参加頂き、治療経験者の方やセミナー参加者と共にお茶を飲みながらざっくばらんに意見交換を行いました。
先生方のの解説に真剣に聞き入る姿や、自らの悩みや不安をじっくりと相談する姿があちこちに見られました。最初は少し堅かった雰囲気も、徐々に和み、終了時間を過ぎても名残惜しそうに語り合っていらっしゃいました。
このシリーズの初回にご紹介した「がん治療新時代WEB」 がん免疫療法Q&A(Q&Aシリーズの5回目)
でreferされていた論文については、その1~その4(前回)までですべてカバーされ、終了致しました。
今回は、リアルワールドエビデンスが、注目される中、免疫細胞療法で最大の治療数/約2万人を持つ、瀬田クリニックグループによる、胃がんのRetrospective Study胃がんの論文(Takimoto et al:Immune-callTherapy for gastric Cancer)をご紹介いたします。この論文は、レベル IIIです。
「Efficacy of Adoptive Immune –cell Therapy in Patients with Advanced Gastric Cancer: A Retrospective Study」→こちら
また、この論文を材料に水海道西武病院副院長の秋山七千男医師が、お茶の水で行われた第2回市民セミナ-の講演「エビデンスがないと言われている免疫療法で分かってきで、この論文を採りあげております。その部分の抜粋が以下quote/unquoteです。
quote
これは瀬田クリニック新横浜の瀧本先生がまとめてくださったものです。1999 年4 月から2016 年9 月までの胃癌、957 例の患者さんの中で初診時、ステージ4 の242 例です。Tablel 患者さんの背景242 人中、手術したのは107 入、放射線治療は21 人、化学療法は213 人の方が受けています。転移している部位は、肝臓、リンパ節、肺、腹膜、骨などです。
Figure2 242例の患者さんがどの位生きていらっしゃるかをあらわしています。
縦軸が生存割合、横軸が診断後の生存月数です。3 年生きているかたが29.9%、5 年生きている方が11.8%です。一方、がんセンターが集計しているデータでは免疫治療を受けていない方で3 年生きている方は10.8%、5 年生きている方は7.3%です。それと比較し免疫治療を受けている方3 で年生きている方は2.7 倍、5 年生きている方は1.6 倍です。化学療法では、各薬で治療を始めた時にステージ4 でその後3 年目、5 年目の生存率のデータを私は見たことがありません。耐性の問題があり存在しないかもしれません。
Figure6 242 例のうち解析可能な156 例です。
縦軸が生存している割合,横軸は診断されてから生きている月数を表しています。 効果判定は免疫治療6 回終了時に行いました(治療開始1後2 週位)部分奏効と安定が100 例、進行が56 例
3 年生存率は31.6%、18.8%ですが なんと5 年生存率は9.7%、9.4%とほとんど変わりがありません。進行のPD の患者さんでも免疫治療を行ったことで1約割のかたが5 年以上いきられているのです。
Table5 5 年以上生きていた方、生きている方です。
全身状態、免疫治療回数、免疫治療の種類、その他の治療、生きている月数
長期間生存されている方は、免疫治療回数もし、多かと思って いましたが12 人中5 人が 6·7 固と初めの3 か月の治療期間のみであったのが意外でした。私が普段の診察で経験するのは、患者さんに調子はどうですかと尋ねると、病気は良くなっているかわからないけど体調は良いと答えられる方が沢山いらっしゃいます。それに 対し化学療法の患者さんは、医師かCらT で腫揚が小さくなっていますとか臆蕩マーカーが下がってきましたと言われるまでご本人は良くなっているかどうか わかりません。また化学療法だけの患者さんはいつも病気を治そう、治そうとしています。最初の治療に使った抗がん剤が効かなくなっ,第て2,第 3 の抗がん斉lj も効かないというあたりで、抗がん剤治療は断念されることになります。進行癌の標準治療においては、抗がん剤治療が唯一であるから、治療そのものが断念されることになります。それに対して免疫療法を行っている患者さんは病気が治っていなくとも、病気とうまく 共存できていると感じて日々の生活を送っている方が多くいらっしゃるように思います。 そのような方は病気が治らない,治らないと生活しているかたより、病気から距離を置 いた生活をしていると思います。
つまり、生活の質の問題です。
unquote
秋山先生は、後段、生活の質(QOL)を論じられています。『患者からすると、がんが縮小しマーカーが下がることは大事ですが、本人の自覚として良くいなっているという実感がないのは、大きな問題だと思います。加えて、一定期間でがんの縮小から再び拡大、マーカーも上昇し次の抗がん剤に移り、やがて、手が尽きると言うケース=がん難民の問題が取り上げられて久しい一方、3大療法のみでは、なかなか解決策が見つからない状況が続いていている現実があります。
「がんで死なないがん患者」という表現をされる方もいらっしゃいますが、該当するケースは決して少なくないように思います。』
秋山医師は、第一回市民セミナーにおいて免疫細胞療法の方かについて、ご自身の経験、また御友人の経験をもとに具体的に語られております。(講演原稿⇒こちら) この講演で、がんに罹患し末期状態になってから免疫療法を始めても全身状態の向上が見られたケースとして友人の例が語られております。また、秋山先生(手術、化学療法)ご自身及び奥さま(手術)は、免疫療法を続けて15年が経ち、これからも年4回一生続けられる方針である由。ご両名とも元気に活動されております。また、講演では、進行がんに対する手術後の再発予防としての役割、全身状態/免疫状態を整え、手術、化学療法、放射線療法と組み合わせる役割、QOLを保ちながら、がんと共存するうえでの効果など、医師としての経験を踏まえ、話されておりました。患者のとっての治療の効果(患者の価値観)に重点を置いた治療が進展することを期待すると同時に、免疫細胞療法の健全な進展を願うところであります。
「免疫の力でがんを治す患者の会」主催、LSI 札幌クリニック共催で、「がん患者さん及びその家族の茶話会」を開催いたしますのでご案内いたします。LSI札幌クリニック杉江理事長(医師)、「免疫の力でがんを治す患者の会」嶺世話役(がん患者の家族)も参加致します。
参加者同士、軽食を取りながら、気楽に、懇談/交流する企画です。ご参加をお待ちしております。
<概要>
「免疫の力でがんを治す患者の会」札幌茶話会
日時: 平成30年8月13日(月) 12:00〜14:00
場所: 株式会社アクト調剤様 本部会議室
札幌市中央区南1条西11丁目327ワンズ南一条ビル3F
電話:011-212-1773
参加費:無料(軽食をご用意いたします。)
定員:12名
申込み締切日:平成30年8月10日(金)
主催: 「免疫の力でがんを治す患者の会」
共催:LSI札幌クリニック
<申込み先>
LSI札幌クリニック
・ハガキの場合:
〒065-0013
札幌市東区北13条東1丁目2-50
(「免疫の力でがんを治す患者の会」札幌茶話会係)
・電話の場合:011-731-6669 担当 藤巻、高橋
・FAXの場合: 011-711-1523
・Eメールの場合: info-meneki@lsi-sapporo.jp
このシリーズの初回にご紹介した「がん治療新時代WEB」 がん免疫療法Q&A(Q&Aシリーズの5回目)
<免疫細胞療法にはエビデンスがなく、治療効果が証明されていないと言われますが、本当でしょうか?>
Aという治療はエビデンスが「ある」、Bという治療はエビデンスが「ない」、といった議論がなされることがありますが、エビデンスはそういった単純な二元論で語れるものではありません。エビデンスのレベルはその信頼性などに基づき、高いものから低いものまで複数段階で評価されます。
社団法人日本医療機能評価機構がまとめた「診療ガイドライン作成の手引き2014」によれば、エビデンスは次の7段階に分けられます。上にあるものほど、偏りのない信頼性の高いエビデンスであるとされています。
国立がんセンター情報サービスの記載を元に作成(http://ganjoho.jp/med_pro/med_info/guideline/guideline.html)
免疫細胞治療に関しても、ランダム化比較試験という、客観的に治療効果を評価するための研究試験により有効性を示す論文がこれまで発表されてきました。複数のランダム化比較試験を検証して結論を導き出す、エビデンス分類では最高位の「Ⅰ」にあたる論文を紹介します。「JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY」という、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の機関誌であり、世界でもっとも権威のあるがん治療に関する学術誌に2016年に発表された論文(以下)です。
この論文では、過去に報告された肺がんに対する免疫細胞治療やがんワクチンなど18の免疫療法に関し、ランダム化比較試験(対象患者数6,756人)を行った結果をまとめて解析しています。
「免疫細胞治療には有効性のエビデンスがない」というのは間違い。
従来医薬品と同様のエビデンスレベルの研究も発表されている。
同論文の中で、瀬田クリニックグループで実施しているものと同様の免疫細胞治療であるアルファ・ベータT細胞療法や樹状細胞ワクチンが行われました。解析の結果は、免疫細胞治療やがんワクチンによって病気の進行が抑えられ、生存期間が延長する、さらにはがんワクチンより免疫細胞治療がより有効であると結論づけられています。
繰り返しますが、この論文はランダム化比較試験など複数の研究データを用いるもので、エビデンスレベルはもちろん最高位の「Ⅰ」ということになります。
Unquote
コメント
「免疫細胞療法はエビデンスがない」とう議論がよく聞かれる一方、こうしたエビデンスレベルIの論文他、多数の論文、ケースレポートが数多く出されているのに、なかなか大きく取り上げられない、また、健全な、議論が発展していない現状は、患者が正しい情報にたどり着くことを難しくしている要因の一つだと思います。免疫療法に関係する学会も積極的に意見表明、ガイドラインの公表をして頂きたいところです。
また、この論文を掲載している米国の臨床腫瘍学会(ASCO)の本年の大会では、免疫療法が中心的話題であったとNHKが報道しておりました。このような世界の動きの中で、本邦では、オプチーボで代表されるオプチーボのように保険収載になった免疫チェックポイント阻害剤以外は、科学的根拠がないと決めつける傾向が強く、適切な情報をベースに主治医と免疫療法の可能性を相談したい患者には、大きなハードルが存在しております。
免疫細胞療法分野の本邦の臨床研究、治療実績は世界に冠たるものがあると言われております。他方で、その分析結果及び治療実績/リアルワールドエビデンスの分析が十分に進んでいるのか、当局を含む関係者に広く共有されているのか、疑問なしとせず、患者会も声を上げて行きたいと考えます。
米国では、免疫細胞療法の持つ従来型の薬とは大きく異なる性格のものであることから、製薬会社が取り上げずらい状況があり、80年代のNIHの研究が、実際の治療の観点では、進展せず、リアルワールドエビデンスの蓄積及び研究が、未発達に終っているように見受けられます。一方、本邦においては、米国での研究成果を踏まえ、その手法の問題点が改善され、発展していった。その有効性と安全性を確認して、1999年から故江川滉二先生が一般の患者に対し、免疫細胞療法を自由診療として始められ、其の後の約20年に亘って、積み上げられた免疫細胞療法の治療実績/(リアルワールドエビデンスの材料)、そこで培われた強み、特にリアルワールドエビデンスに基く臨床研究等に強みがあります。この強みを、国のがん対策に戦略的に生かしていくことが重要。患者会としては、例えば、国による「がん対策の重点項目」に入れるように関係当局に要請して行く活動をする必要を痛感する次第です。
また、こうした状況下、患者/医師間の「適切な情報」のベースを作る契機となるような活動を行っていく一環として本シリーズを続けて行きたいと思います。
次回は、リアルワールドエビデンスに基いた分析論文として胃がんの論文をご紹介致します。
このシリーズの初回にご紹介した「がん治療新時代WEB」 がん免疫療法Q&A(Q&Aシリーズの5回目)
<免疫細胞療法にはエビデンスがなく、治療効果が証明されていないと言われますが、本当でしょうか?>
の回答の中でreferされている論文のうち前回は、肝臓がんの論文を紹介しましたが、今回はもう一組の論文(含む追試論文)を紹介します。いずれも木村秀樹博士の肺がんについての論文です。
a. Kimura H et al.: Cancer 80:42,1997 →こちら
b. Kimura H et al:Cancer Immunol immunother.64:1,2015 (肺がん追試論文) →こちら
この木村先生の論文(上記a.)ついて、この免疫細胞療法の草分けであり、育ての親ともいうべき、故江川滉二先生がその著書(がん治療体にやさしい医療への潮流/河出書房新社) なかで次のように書かれております。
以下、転用。(P.107-110)
「肺がん手術後の長期生存率が上昇した。」
肺がん以外の手術後化学療法については、胃がん、乳がん、大腸がんなどについて非常に多くの報告があり、その結果、手術後の抗がん剤治療が推奨されている場合が多い。しかし、治療による5年生存率の上昇や、生存期間中央値の向上は、一般にそれほどはっきりしているわけではない。
また、乳がんや前立腺がんは、それぞれ女性ホルモン、男性ホルモンがなければ増殖しない性質があるので、手術後の治療は、これらのホルモンの働きを阻害する薬剤によるものになる。ホルモン阻害剤による治療は一般的に極めて有効であり、これらのがんの高い5年生存率の要因となっている。
しかし、これらのがんも、長期間にわたってホルモン阻害剤を使っていると、やがてホルモンがなくなっても増殖するがん細胞が残ることになり、その効果もなくなってくる。そうなると他の進行性がんと同様、抗がん剤しか選択肢がなくなってしまうことになる。
これに対し、千葉県がんセンターの木村秀樹博士の発表によると、肺腺がん(II期からIV期を含む)手術後の患者さんをなるべく均等に二つのグループに分け、必要であれば術後の化学療法あるいは放射線治療を行ったという。
そして第一グループはそのまま経過観察をし、第二グループはそれらの治療と併行して、手術後に数回の活性自己リンパ球の注入を行なった。
その結果、第一グループは、7〜8年後の生存率が30%程度でだったが、第二グループの長期生存率は60%程度の上昇したという。この結果は、同じ肺腺がんに対する手術後抗がん剤治療の効果よりもよほどはっきりしている。
この臨床研究は、患者さんの治療を中心に考えておこなわれたものであり、治療効果のエビデンス(証拠)を得ることを唯一の目的とした研究ではないため、病状や状態が様々な患者さんを含んでいる。更に手術だけではなく、抗がん剤や放射線も併用されており、その方法も状況に合わせて多様であるため、いわゆるエビデンスを中心に考える人たちの中には、この研究を多少難点のある報告と考える人たちもいる。
しかし、ある程度のリンパ節転移をすでに起こしている患者さんが対象に多く含まれているため、患者さん中心位考えるなら、このような併用治療をお行わないわけにはいかないし、現実の患者さんを一番よく反映している報告であるといえよう。
また、「7〜8年後の生存率」ということは、実質的に治癒を意味している。更に、効果判定が患者さんの生死によるものだから、がんの縮小効果による判定の場合と異なり、その結果は絶対的である。報告から導き出すと、術後の抗がん剤、放射線治療だけでは再発によって亡くなられる運命にあった70%の患者さんのうち4割ほど(患者さん全体の30%)の方々が、免疫細胞療法を加えることによって救われたということになる。それも単にがんが小さくなったということではない。治癒して命が救われたのである。これは、重要な結果である。
この結果に基いて考えるならば、日本の年間に肺がん罹患者の総数が約5万人、その内の2万人が手術を受けるとして、その30%、つまり、肺がんだけでも約6000人の患者さんが、手術後に免疫細胞治療を加えることによって新たに治癒に至る可能性があるということになる。
もちろんこれは、免疫細胞療法のみで効果を示しているわけではない。もともと手術との併用が前提であり、それに加えて抗がん剤や放射線の治療と併用した結果、三大治療法のみの場合と比べて上乗せ効果があったということである。しかし、これは、十分に意義のある効果と見るべきだ。
以上、がん治療体にやさしい医療への潮流(江川滉二著/河出書房新社)より転用
下線部分は、患者にとって極めて重要な指摘であり、免疫細胞療法の併用により、上乗せ効果があったという事、特に、全体の3割の患者さんが治癒して救われたという報告には、希望を見出します。理由が十分に学術的に解明され、将来保険収載になる道を開くことも大事であるが、今、がんに直面にしている患者にとっては、今適用できる治療法が重要である。その観点で「十分意義のある効果とみるべき治療法」があり安全であるならば選択肢のひとつとして是非、医師と相談のうえ適応を検討したいものです。「いわゆるエビデンスを中心に考える人たちの中には、この研究を多少何点のある報告考える」と言う記述もありますが、何故効果があるのかが十分に解き明かされていない段階であってもこうした「リアルアルワールドエビデンス」をベースとし臨床研究結果に大いに期待を寄せるものです。
この報告書で免疫細胞療法を併用した患者さん群ととそれを併用しなかった患者さん群で生存期間中のQOLに優位の差を認めるか否かも大変注目するところです。恐らくは、免疫細胞療法を併用した群のQOLの方が高かったのではないかと推察しています。
また、この論文は、追試とともに、2016年に米国臨床腫瘍学会の機関誌「JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY](ASCO)に掲載されたエビデンスレベルIである
「Efficacy of Tumor vaccines and Cellular Immunotherapies in Non-Small-Cell Lung Cancer: A Systematic review and meta -Analysis」(対象者6,756人)
の中にも組み込まれております。
前回ご紹介した「がん治療新時代WEB」 がん免疫療法Q&A(Q&Aシリーズの5回目)
<免疫細胞療法にはエビデンスがなく、治療効果が証明されていないと言われますが、本当でしょうか?>
の回答のなかで免疫細胞療法の再発予防効果(再発率を大きく低下させた)を示している2つの有名なランダム
化比較試験論文を紹介しています。
Takayama T et al.: Lancet 356:802 ,2000(肝臓がん)
Kimura H et al.: Cancer 80:42,1997(肺がん)
これらについての追試論文
Lee JH et al.: Gastroenterology 148:1383,2015(肝臓がん)
Kimura H et al.:Cancer Immunol immunother.64:51,2015(肺がん)
これらの論文は、前回と外シリーズより抜粋して掲載したエビデンスレベル(国立がんセンター)のII(2番目に高いレベル)に相当します。
今回は、その内、肝臓がん論文及びその追試論文を紹介いたします。
Takayama T et al.: Lancet 356:802 ,2000 →こちら
Adoptive immunotherapy to lower postsurgical recurrence rates of hepatocellular carcinoma: a randomised traial
株式会社 リンフォテックWebサイトより抜粋
Lee JH et al.: Gastroenterology 148:1383,2015 →こちら
Adjuvant immunotherapy with autologous cytokine-induced killer cells for hepatocellular carcinoma.
Full Text →こちら
尚、韓国において、この両論文にある免疫細胞療法は、Green Cross Cell Corp.の肝臓がんに対する活性化自己リンパ球療法として食品薬品安全省MFDS(旧KFDA)の医薬品としての承認を取得しております。
2018年3月に閣議決定された「第3期がん対策推進計画」において、手術療法、放射
線療法、薬物療法に加えて、初めて免疫療法が明確に位置付けられた。第2分野別施
策と個別目標2.患者本位のがん医療の実現(2)がんの手術療法、放射線療法、薬
物療法及び免疫療法の充実の項(エ)科学的根拠を有する免疫療法についてのくだりが
それである。
また、大野智大阪大学准教授が、朝日新聞の医療情報サイト「アピタル」で医療・健
康情報を連載されておりますが、その中でEBM(Evidence Based Medicine)につ
いて、「科学的根拠に基づいた医療(EBM)は、「科学的根拠」「臨床現場の状
況・環境」「医療者の技術・経験を含む専門性」「患者の意向・行動(価値観)」の
4要素を考慮したより良い患者ケアに向けた意思決定を行うための行動指針」と定義
されております。大野先生は、同時に、「何が何でも患者の希望通りに治療すること
がEBMと言っているのではなく、医師の決定においては、患者に正確な情報が提示
され、患者自身が、その情報を十分に理解していることが大前提である」と述べられ
ております。
他方で、患者自身ががんについての理解を深めることの重要性を理解してもなかなか
適切な情報 にたどり着けない現実の難しさも存在致します。「無作為抽出による比較
対象試験」(RCT)の重要性を認識しつも、多くの患者の経験、置かれた状況から、
その限界 も理解する必要があるように思います。
この患者会のHP,FBでは、そうした環境を念頭に、関連情報の発信を心がけてお
りますが、免疫細胞療法を支える論文について採りあげられることが少ないことに鑑
み、上述の科学的根拠ついて、「がん治療新時代vol13」に掲載されている後藤重則
順天堂大学客員教授、滉志会 理事長、瀬田クリニックグループ統括院長による免疫療
法Q &A5(Q&Aシリーズの5回目)の「免疫細胞療法治療にはエビデンスがなく、
治療効果が証明されていないと言 われていますが、本当でしょうか」を紹介すると同
時に、そ の中に ある論文を順次紹介いたします。
今回は、がん治療新時代WEB がん免疫療法Q&A5を掲載します。→こちら
その中に掲載されているエビデンスレベルの7段階表(国立がん研究センター情報サー
ビス「診療支援」参照)を今後掲載する論文の位置を示すものとして使用する観点か
ら抜粋すると以下の通りです。